「つみたてNISA入門」は今回で最終回です。
前回は「運用方法」の考え方を紹介しました。
最終回はつみたてNISAの「出口戦略と取り崩し方法」について考えてみましょう。
目次
いま3時。おやつのケーキと夕ご飯、どっちを食べますか?
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机の上には、おやつのケーキと夕ご飯用のカレーが置いてあります。
あなたはどちらを食べますか?
正解は人それぞれだとは思いますが、資産運用・形成の場合は、効率の良い順番があります。
資産形成が上手な人は「おやつにケーキを食べて、夜にカレーを食べる」のです。
どういうことでしょうか?
資産形成がうまい人は「カレーはおやつ時に食べない」
カレー=老後の資金
自然に考えると、おやつ時には「ケーキだけ食べれば良い」と思います。
欲張って「ケーキとカレーの両方を食べると夕方にお腹が空いて困ります。
またカレーをおやつ時に食べるのはもったいないです。
この考え方は資産形成も同じです。
「ケーキ=現役時代のお給料」であり「カレー=老後のための資産」です。
つみたてNISAの非課税期間は20年 現役時代なら20年たっても何もしなくていい
つみたてNISAの非課税期間は20年間です。
20年たったらどうするべきでしょうか?
筆者の考える正解は「現役時代なら何もしなくて良い」です。
資産形成の上手な人の一例は以下のような流れです。
2. つみたてニーサを含む資産形成の利益(カレー)は老後(夕食)に取っておく
3. 老後の資産(カレー)は時間を有効に使って、複利効果で大きく増やすことを考える
4. 老後においしいカレーを食べればそれでいい
つまり現役時代はおやつの時間なのです。
夕食時までつみたてNISAを含む資産形成で生じた利益には手を付けずに、複利効果で大きくすることを考えます。
これが自然な考え方ではないかと、いまの筆者は考えています。
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つみたてNISAは20年たって非課税期間が終わっても、運用を続けられる
つみたてNISAの非課税期間は20年間です。
ただ20年たっても何か特別なアクションを取らないといけないということはありません。
20年たつと、つみたてNISAの口座から通常の課税口座に移るだけです。
希望者はそのまま積み立て投資を継続できます。
新たな積み立てをせずに放っておいても構いません。
もちろん、安全な預貯金で保有したい方は、売って現金にできます。
すなわち20年後も「お金を育てて良い」のです。
カレーを食べるタイミング
つみたてNISAを含めて資産が大きくなった後、いったいいつ資産を使う(カレーを食べる)のでしょうか?
筆者の個人的な意見としては「定年退職して、公的年金以外に収入(ケーキ)がなくなって、公的年金だけで食べて行けなくなった時に、資産を取り崩す(カレーを食べる)」のが自然だと考えています。
「もう働けない!」、「収入がない!」そんな時にカレーを食べるのがいいと思います。
ただし現在20代30代の方の場合は、公的年金の受給開始年齢が少子高齢化と長寿化に伴い、70歳や75歳になっているかもしれません。
その場合はその時まで資産形成をすることになるかもしれません。
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取り崩し方法はいくつかある
老後の資産の取り崩し方法は一概に「これが正解」というものがないのではないかと思います。
それは人によって老後の経済状況が大きく異なるからです。
資産が億単位の人もいれば、数百万円の人もいるでしょう。
その場合、同じ取り崩し方法とはいきません。
ここでは一例を考えてみたいと思います。
例えばつみたてNISAやiDeCoや預貯金を含めてある程度の余裕資金がある場合、
・ 残りはリスク許容度の範囲内で引き続き資産運用を行う
なども考えられます。
この場合の注意点としては、最低限の余裕資金を現金で確保しておくことなど、安全性を重視することです。
もう労働からの収入(ケーキ)がないのですから、虎の子の生活資金だけは一定額を確保しておかないといけません。
給与収入(ケーキ)のない老齢期は安全性も大切
「余命から逆算して最低限の生活が送れる金額」とありますが、どういうことでしょうか。
例えば将来、公的年金が毎月18万円受給できるとした場合で考えてみましょう。
その人が毎月26万円の生活費で生活しているとすると、
「18 ― 26 = 毎月―8万円の不足」です。
年間ではおよそ100万円です。
65歳から100歳まで生存した場合、
35年 × 100万円 = 3,500万円です。
(インフレによる物価上昇や住宅のリフォーム費用・医療・介護費用などは無視します。)
つまりこの場合は安全性を確保したい人は3,500万円を銀行に預けておき、残りを資産運用に回す、という選択肢も考えられます。
もちろんそんなに大きなお金が資産形成できていない場合は、毎月の生活費を小さくすることが必要です。
分かりやすく言うと、「節約」をしたり「生活水準」を引き下げたりします。
ただし高齢期の資産運用を考えた場合、現実的には認知的なエラーが70代や80代で出てくる可能性もあるので、この点も注意が必要です。
具体的には知識や判断が鈍り、「マシでない金融商品」や「保有しなくても良いリスク商品」を保有してしまうことが考えられます。
そのため高齢期においては「リスクのある運用そのものをしない」という選択肢も必要な人もいると考えられます。
シリーズ「つみたてNISA入門」のまとめ
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今回のまとめとしては、つみたてNISAの非課税期間は20年間です。
しかしそこで売って、資産形成をストップ、あるいは利益を使わないといけないことはないので、そのまま育てておくことが合理的ではないかと思います。
これでひとまず「つみたてNISA入門」はおしまいです。
つみたてNISAのポイントのおさらい
今後は多くの人(特に若い人)にとって公的年金だけで生活することは厳しくなります。
自分の老後のためにつみたてニーサやiDeCoという制度の検討をしてみてはいかがでしょうか。
ちなみに1990年から毎月3万円を、つみたてNISAでも買える「先進国株式」に投資していた場合、2019年時点ではどうなったでしょうか。
掛け金総額はおよそ1,000万円ですが、資産額は合計でおよそ3,500万円に増えています。
これは過去の事実であり、20年後の未来を保証するものではありません。
しかし筆者は明るい未来の可能性を信じています。
これから20年たった時に、次のような内容の記事が新聞の一面にでたら、あなたは次のどちらの感想を抱くでしょうか。
2.「ああ、あの時つみたてNISAで資産形成をしていればもっと楽だったのに」
上記のような見出しが20年後の新聞に載ったその時、多くの方が「積み立て投資で資産形成ができるんだなあ」と分かると思います。
でもそれから始めたら遅いのではないでしょうか。
いま20代の方は40代です。いま40代の方はもう60代です。
積み立て投資における資産形成で大切なのは「時間」でした。
20年後の読者の方は何歳でしょうか。
そしてその時、資産がいくらあるのでしょうか。また、いくら必要でしょうか。
筆者がこの「つみたてNISA入門」シリーズの記事で示しているのは、あくまでも可能性の一例です。
しかし、仮に想定している未来が訪れるのであれば、20年後に始めるよりも、いま始めた方が合理的ではないでしょうか。
本記事が読者の方の合理的な資産運用のほんの少しの力になれば幸いです。(執筆者:佐々木 裕平)
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