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【繰り下げ受給】在職老齢年金で全額カットの場合は増額メリットなし 仕組みと注意点を解説

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【繰り下げ受給】在職老齢年金で全額カットの場合は増額メリットなし 仕組みと注意点を解説

2022年4月から年金の受け取り開始時期が延長されます。

具体的には、原則として70歳受け取り開始が最も遅い時期でしたが、改正後は75歳受け取り開始が最も遅い時期となります。

繰り下げのメリットは1か月あたり0.7%の年金増額ですが、「自身がどれだけ長く生きられるか」という部分だけでなく、他にもおさえておくべき論点がありますので確認していきましょう。

繰り下げ受給検討中の人は在職老齢年金との関わりに注意

繰り下げによる増額幅

1か月あたり0.7%の増額した年金を受け取ることができる「繰り下げ制度」は、前提として66歳まで(最低1年)は繰り下げる必要があります。

厚生年金・国民年金いずれか、または双方の繰り下げが可能です。

例えば国民年金のみ繰り下げた場合は、老齢基礎年金のみ増額対象です。

なお繰り下げは「老齢」年金のみであり、遺族年金や障害年金には繰り下げという選択肢はありません

在職老齢年金との関係

老齢厚生年金には、報酬との関わりで年金の全部または一部がカットされる「在職老齢年金」という制度があります。

重要な点として、例えば報酬との関係で老齢厚生年金が全額カットされていた場合、繰り下げによる増額は在職老齢年金による調整(カット)を行ったあとの年金額に対して増額率が適用されるため、全額カットなら増額しないこととなります

また一部カットされていた場合には、一部カットした後の金額に対して増額率が適用されます。

年金額カットの基準となるもの

尚、年金額カットの基準となるものに含まれるのは下記の3点です。

ア 標準報酬月額

イ 在職老齢年金適用以前の過去12か月の標準賞与額を月額に換算したもの

ウ 老齢厚生年金を月額に換算したもの

ア+イを総報酬月額相当額と呼び、ウを基本月額と呼びます。

これは65歳前も65歳以降も同じ考え方ですが、ウの基本月額については注意が必要です。

65歳前については、老齢厚生年金の報酬比例部分と定額部分が支給される場合には、定額部分も含めた額が対象となりますが、加給年金は含まれません。

65歳以後は老齢厚生年金のみで加給年金や経過的加算額は含まれず、老齢基礎年金も含まれません。

年金手帳

加給年金との関係

老齢厚生年金が全額カットされていた場合、加給年金は全く支給されません。

具体的には在職老齢年金により老齢厚生年金が全額カットとなるような報酬形態であった場合、加給年金は全く支給されないということです。

尚、加給年金そのものは増額の対象となるものではありません。

70歳から75歳時の注意点

厚生年金の加入期間は70歳までです。

これはその後も会社に残り働き続けたとしても、厚生年金の被保険者資格は70歳で喪失するということです。

実務上は被用者として報酬との調整が行われる在職老齢年金の対象にはなり続けるものの、厚生年金の資格は70歳で喪失するということです。

厚生年金の保険料については、70歳の資格喪失を契機に徴収されなくなります。

例えば70歳の資格喪失と同時に会社も退職した場合、仮に75歳までの繰り下げをする場合、言うまでもなく70歳までは毎月労働収入があったものの、そこから5年間は定期的な収入がなくなるということです。

また、75歳までの繰り下げを検討するという時点で一定の備えがあることが前提となりますが、在職老齢年金によって全額カットされていた場合にはそもそも年金額が増額対象でないということもあり得ます。

年金の増額幅(75歳まで繰り下げた場合の増額は84%)を想定した生活設計をしていた場合には、その増額分は享受できませんので注意が必要です。

老後の生活設計

年金制度の仕組みを知って、受給時期を検討しよう

繰り下げ受給を検討する際、「どの程度長生きするか」を確実に把握することは困難です。

しかし、制度上の仕組みを把握することは前者以上に困難ではありません。

制度を知っておくことで「そんなはずではなかった」を回避すべく、老後の生活設計にお役立ていただけますと幸いです。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)

《蓑田 真吾》
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執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾 蓑田 真吾

社会保険労務士 独立後は年金などの社会保険制度、人事労務管理に関する講演活動を行い、また、労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は有効的な社会保険制度の活用、様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業をサポートしています。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等 寄稿者にメッセージを送る

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