
離婚の話し合いでは、家やお金の分け方に時間を使います。その一方で、届出を出した翌日から始まる手続きは後回しになりがちです。配偶者の扶養に入っていた人は、離婚した時点で年金の立場が変わります。期限は14日。何を、どこへ出すのかを先に決めておきましょう。
離婚から半年後、届いた封筒で気づいた40代女性
「健康保険の手続きはしたのに、年金のことは誰も教えてくれませんでした」
結婚してから20年近く専業主婦だった40代の女性は、離婚後にこう話したといいます。離婚届を出したあと、夫の勤務先を通じて健康保険の資格喪失手続きをし、そこで手続きは終わったつもりでいました。子どもの転校や引っ越しに追われ、役所へ行ったのは住民票の異動のときだけだったそうです。
半年ほど経って、市役所から封筒が届きます。国民年金の保険料が納められていないという内容でした。会社員の夫に扶養されていたあいだは保険料を自分で納める必要がなかったので、離婚したあとも同じだと思い込んでいたといいます。
年金の立場は、離婚届を出した時点で変わっています。手続きをしていなくても変わります。変わったことに気づかないまま過ぎた月は、後から埋めなければならない期間として残ります。
第3号被保険者でいられるのは、第2号の配偶者だけ
国民年金の被保険者は3つに分かれています。国民年金法7条1項は、第2号被保険者を厚生年金保険の被保険者と定め、第3号被保険者を、日本国内に住所を有する者等で、第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもののうち20歳以上60歳未満のもの、と定めています。そして第1号被保険者は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって第2号にも第3号にも当たらない人です。
条文が置いている条件は配偶者であることです。離婚すれば配偶者ではなくなるので、第3号被保険者の要件を満たさなくなります。会社を辞めたわけでも収入が変わったわけでもないのに、身分関係が変わっただけで立場が動きます。
第1号は自分で保険料を納める立場なので、ここで納付が始まります。届出が確認できない場合には、日本年金機構から国民年金加入の案内が届いたり、加入処理のうえで納付を催告されたりすることがあります。この差が、あとから未納の期間として表に出てきます。
14日以内に、どこへ何を出すか
期限は年金も健康保険もそろって14日です。

年金のほうは、国民年金法施行規則6条の2が、種別の変更の届出は当該事実があった日から14日以内に届書を市町村長に提出することによって行わなければならない、と定めています。窓口は年金事務所ではなく市区町村です。
健康保険のほうは、国民健康保険法施行規則3条が、世帯主は14日以内に届書を市町村に提出しなければならないとしています。配偶者の健康保険の被扶養者から外れると、他の保険に入らないかぎり国民健康保険の対象になります。加入の手続きでは、被扶養者でなくなったことを示す資格喪失の証明を求められることがあるので、元の勤務先を通じて発行してもらってください。
離婚の前後は引っ越しや転校の手続きが重なります。住民票の異動で市区町村の窓口へ行く日に、年金と健康保険もまとめて済ませてしまうのが確実です。
就職するなら、手続きの相手が変わる
離婚を機に働き始める場合は、道筋が変わります。勤め先で厚生年金と健康保険に入るなら、立場は第2号被保険者です。この手続きは勤務先が行うため、自分で市区町村へ種別変更を届け出る必要はありません。
問題になりやすいのは、間が空くときです。離婚してから就職するまでに数か月あるなら、その期間は第1号被保険者になります。すぐ働くつもりだからと届出を先送りにすると、その空白がそのまま未納の期間になります。入社日が決まっていても、間が空くなら一度は第1号の手続きをしておいてください。
パートやアルバイトで働く場合は、勤務時間や日数によって厚生年金に入るかどうかが変わります。入らないのであれば第1号のままです。働き方が決まったら、勤務先に社会保険に加入するかどうかを確かめておくと、二度手間になりません。
保険料を納めるのが難しいときの窓口
収入が途切れた状態で、国民年金保険料と国民健康保険料(税)が同時に始まるのは重い負担です。どちらにも、納めるのが難しい人のための仕組みが用意されています。
国民年金には保険料の免除と納付猶予の制度があります。所得が一定の基準を下回る場合に、申請して承認されれば保険料の納付が免除または猶予されます。大切なのは、未納のまま放っておくのと免除を受けるのとでは扱いが違うという点です。免除は申請して初めて受けられるので、払えないと分かった時点で窓口へ相談してください。
国民健康保険料(税)についても、軽減や減免の仕組みがあります。ただし基準や運用は市区町村ごとに違うため、住んでいる自治体の窓口で確かめる必要があります。ここは全国共通ではないので、他の人から聞いた話をそのまま当てはめないでください。
役所へ行く日を、離婚届と同じ日に決めておく
離婚のあとに残る手続きのうち、期限が短いのは年金と健康保険です。どちらも14日で、窓口は同じ市区町村です。離婚届を出す日が決まったら、その足で寄るか、翌日に行く日を決めておいてください。元の勤務先から資格喪失の証明が必要かを確認する段取りも、離婚が決まった時点で頼んでおくと止まりません。保険料の負担が心配なら、その場で免除や減免の相談まで済ませられます。


