
家族を見送り、ようやく気持ちが落ち着いてきた頃に、税務署から相続税に関する封筒が届くことがあります。差出人が税務署というだけで、課税が決まったのかと身構えるものです。この封筒が何を意味していて、期限までに何をすればよいのかを解説します。
税務署からの一通に戸惑った60代の会社員
「税務署から封筒が来たんです。相続税を払え、ということでしょうか。」父を見送ってしばらく経った頃に届いた一通に、関東で会社勤めを続ける60代の男性は手が止まったといいます。中身は相続税に関する案内と、「相続税の申告要否検討表」という書き込み式の用紙でした。
この用紙には「相続税の申告書ではありません」とはっきり書かれています。国税庁は、税務署から届くこうした照会を「相続についてのお尋ね」と呼んでいます。検討表は、申告が不要なときに提出する様式です。届いた時点で税額が決まったわけではありません。
相続の情報が税務署へ渡る流れ
なぜ自分に届いたのか、と感じるかもしれません。相続税法第58条は、死亡等の届書等情報の提供を受けた法務大臣が国税庁長官へ通知すること、市町村長が亡くなった人の土地や家屋の固定資産課税台帳の登録事項などを、その市町村の所在地を所轄する税務署長へ通知することを定めています。
そのうえで押さえておきたいのは、申告が必要かどうかは封筒が届いたかどうかで決まるものではない、という点です。分かれ目は、加算対象となる生前贈与を加えた課税価格の合計額が基礎控除額を超えるかどうかにあります。
基礎控除額と課税価格を並べて確かめる
検討表は、不動産、有価証券、預貯金、生命保険金や死亡退職金、借入金や葬式費用に加えて、生前に受けた贈与まで順に書き込む作りになっています。相続時精算課税を適用した贈与と、亡くなる前3年以内の暦年課税による贈与に、それぞれ記入欄があります。令和8年12月31日までに相続が開始した場合、この期間の暦年課税による贈与は、贈与税がかからなくても入ります。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。相続を放棄した人がいても、その人を含めて数えます。一方で養子は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までしか数に入れられません。相続人が受け取った生命保険金と死亡退職金は額面のままではなく、検討表でもそれぞれ500万円に法定相続人の数を掛けた額を引いてから足します。

小規模宅地等の特例などを適用した結果として基礎控除額以下になる場合は、税額が出なくても申告が必要です。申告書の様式は亡くなった年ごとに分かれており、令和8年に亡くなった場合は令和8年分用から様式が変わりました。令和7年以前ならその年分用を使います。
残された時間は思っているより短い
申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限の日が土曜日や日曜日、祝日、12月29日から1月3日に当たるときは、休日明けの日が期限になります。提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署で、納付も同じ期限までに行います。遅れれば加算税や延滞税がかかる場合があります。封筒が届いたのは、まだ間に合ううちに動き出せる合図です。迷うなら税務署や税理士の力を借りましょう。


