
収入が落ちて毎月の養育費が重くなったとき、真っ先に浮かぶのが、今月だけ止めるという選択です。ですが2026年4月から、父母の意思に基づいて作成されたことを示せる取決めの文書などがあれば、公正証書などの債務名義がなくても差押えの手続に進めるようになりました。止めた側が動かないままでは、話し合いの余地がないまま執行だけが進みます。順番を変えて、先に家庭裁判所を使ってください。
止めた月から、差押えの手続が動き出す
2026年4月1日に施行された改正民法で、子の監護費用の債権に先取特権という優先権が付きました(民法308条の2)。これまでは公正証書や調停調書といった債務名義がなければ差押えができませんでしたが、形成養育費に基づく担保権実行では、父母間で作成した文書などに基づいて差押えの手続を申し立てられます。ただし、父母間で作成した合意文書に基づく申立ての場合は、その文書が父母の意思に基づいて作成されたことを証明する必要があります。先取特権が付く上限は、子1人当たり月額8万円です。施行前に取決めがされていた場合は、施行後に生ずる養育費に限って付きます。
差押えに必要な情報を得るために、財産開示手続が使われることがあります。呼出しを受けた財産開示期日に正当な理由なく出頭しない、宣誓を拒む、宣誓したうえで陳述しないか虚偽の陳述をする、といった場合は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(民事執行法213条1項)。連絡を絶つ動き方は、いちばん重い手続を自分から呼び込むことになります。
減らす道はある。ただし通り道が決まっている
民法は、協議上の離婚をするときに、子の監護に要する費用の分担を父母の協議で定めるとしています。このとき、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとも書かれています(766条1項)。協議が調わないときや協議ができないときは、家庭裁判所がその事項を定めます(同条2項)。そのうえで家庭裁判所は、必要があると認めるときは、いったん決めた内容を変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができます(同条3項)。減額などは、この変更の枠組みで扱われます。
決めるのは相手の同意か家庭裁判所であって、支払う側の判断ではありません。取決めをした時点の前提が何によってどう変わったのかを、収入を示す資料とともに持ち込む形になります。
止める前に踏む順番

調停では、双方の事情を聞いたうえで、収入に関する資料の提出を求められます。裁判所は申立てに必要な書類として、源泉徴収票や確定申告書の写しなど収入に関する資料を挙げています。手元にそろえてから申し立てるほど、話は早く進みます。
収入が落ちた月のうちに動く
養育費を減らせるかどうかを決めるのは、支払う側ではありませんでした。黙って止めれば差押えの段取りが動き出し、話し合いの機会はかえって遠のきます。収入が落ちたことを示す資料がそろうその月のうちに、まず相手へ、届かなければ家庭裁判所へ持ち込んでください。順番を守るほど、認められる余地は残ります。


