
積み立ててきた投資信託の値段が買ったときより下がっていると、不安になるものです。分配金も受け取ってきたのに、結局もうかっているのか損をしているのか分からないという方もいるでしょう。手がかりになるのは、受け取ったお金まで含めて損益を出すトータルリターンです。値段の上下だけでは、投資信託の損益は分かりません。
値下がりに見える理由は分配にもある
最初に押さえておきたいのが、投資信託の値段にあたる基準価額と、分配の関係です。金融庁が個人の投資家向けに作った説明資料は、分配した分だけ基準価額は下がると図で示しています。分配金は投資信託の純資産から支払われ、運用状況などに応じて変動し、支払われない場合もあります。また、運用収益を超えて支払われる場合や、投資家にとって元本の一部払い戻しに当たる場合もあります。
ここから分かるのは、値段だけを追っても手元の損益は見えないということです。値段が買ったときより下がっていても、分配で受け取ったお金を足すと見え方が変わることがあります。反対に、分配を受け取り続けていても、それだけで利益が出ているとは言えません。
受け取ったお金まで足して一つの数字にする
こうした分かりにくさについて、金融庁の金融審議会のワーキング・グループは2012年12月の最終報告で、投資期間全体の分配を含む損益を受益者がつかみやすくすることが重要だと指摘しました。報告が示した計算の基本は、計算時点の評価金額に、受け取った分配の累計と換金した額の累計を足し、買い付けた額の累計を引くというものです。金融庁の審議会資料も、この報告を受けて、損益を知らせるトータルリターン通知制度が導入されたと振り返っています。
通知の頻度については、日本証券業協会の規則が年1回以上と定めています。対象は原則として2014年12月1日以降に新たに買い付けた投資信託で、対象外となる商品や、以前から保有していた銘柄の取り扱いには例外があります。2014年12月1日は制度の施行日であり、各社が通知を実際に送った日ではありません。販売会社によっては、トータルリターンではなく、投資損益や運用損益、累積損益といった名前で損益を表示していることもあります。
騰落率は投資信託そのものの成績
よく似た数字に騰落率があります。金融庁が示す販売会社の共通KPIの定義では、銘柄のリターンを出すときに使う基準価額は、税引き前の分配を再投資したとみなした基準価額だとしています。同じ定義は、顧客の運用損益を、評価金額に税引き後で受け取った分配と売った額の累計を足し、販売手数料を含めて買った額の累計を引いて出すとしており、二つを別々の数字として扱っています。分配金を再投資した場合には、分配金と買付金額の双方で整合するよう計算する必要があります。

値段より先に損益の欄を見る
値下がりが気になったら、まず販売会社から届く書面や取引画面で、トータルリターンや運用損益の欄を探してみてください。値段の上下だけで判断せず、受け取ったお金を含めた損益で見ると、今の状況を落ち着いてつかめます。計算の中身が分からないときは、何を足して何を引いているのかを販売会社に尋ねれば、数字の意味がはっきりします。


