最近、不動産が激安で売られているという記事を見かけます。
確かに、地方や別荘地などでは、しばらく前から「激安不動産」がありました。
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最近はそうした激安物件が増えてきています。
地方では50万円を切る物件や、なかにはタダ同然の物件もあります。
東京から近い千葉や神奈川にも200万円を切る戸建てやマンションが存在します。
なぜこのような「激安不動産」が生まれるのでしょうか。
目次
激安不動産が生まれる仕組み
「激安不動産」に明確な定義はありません。
ここでは
を指すとしましょう。
不動産は所有するだけで費用がかかります。
固定資産税などの税金のほか、定期的に草刈りをしたりしなければ荒れ放題になってしまいます。
建物は使わなくなってしまうと設備も一気に傷みますし、定期的なメンテナンスも必要です。
リゾートマンションや別荘地の場合は管理費などの費用がかかることもありますし、私道に面している場合は私道負担金などの費用がかかることもあります。
電気・ガス・水道などの基本料金は使っていなくてもかかります。
使わなくなっても費用はかかるため、負担だけが残ります。
一方、不動産を取得する購入者は登記費用や登録免許税(印紙代)などもかかります。
不動産を売却したくても、購入者がその負担をしても欲しいと思える物件でなくては、条件が合わず、売買が成立しません。
結果として
という人が売り出した物件が「激安不動産」として存在することになります。
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不動産業者は「激安不動産」の扱いに積極的ではない
通常、不動産業者は不動産の売却を依頼された場合、その不動産の魅力を引き出し、少しでも高い値段で買っていただけそうな方を探します。
しかし不動産を魅力的に見せるためには、売りたい人、あるいは不動産業者もそれなりの費用をかけなくてはいけません。
売主は少しでもきれいに見せるために建物内や周辺の片付け、清掃、敷地内の立ち木の手入れなどを行う必要があるでしょう。
不動産業者は広告などの販売活動をする場合にチラシやネット掲載などを行うなどの広告宣伝費や、現地案内などの手間もかかります。
しかし、売主には負担になっている不動産にさらに費用をかけることに抵抗があり、かけた費用以上の価格で売れる保証もありません。
また、不動産業者は国土交通省の告示により、売主あるいは買主から受け取れる手数料の上限が決められています。
・物件価格が200万円以下の部分…(5%+消費税)
・物件価格200万円を超400万円以下の部分…(4%+消費税)
・400万円を超える部分…(3%+消費税)
この規定により、仮にその物件の価格が100万円であった場合、仲介業者は原則として、売主から5万円+消費税の金額しか受け取れません。
不動産業者は現地のほか、役所、ガス・水道・電気などのインフラ関連調査などを行い、取引に必要な重要事項説明書や契約書の作成にかなりの労力を費やします。
しかし、100万円の物件の場合、受領できる仲介手数料は仮に売主、買主の両方から受領できたとしても合計で10万円+消費税しか受け取れません。
しかも不動産業者の報酬は「成功報酬」。
売買契約が成立しなければ受領できません。
かかる手間に対して、報酬が安く、受け取れない可能性もあるのです。
通常の仲介業務では不動産会社が不動産売却のために負担する費用は、依頼者に請求できません。
最近では、依頼者の特別な依頼により発生する広告費用や出張費などの実費は、請求が認められています。
これらは、仲介手数料ではありませんので、かかる分だけ請求することもできますが、その結果売れるとは限りません。
大きな額をかけることは売主の負担になってしまいます。
このような背景から不動産業者が積極的に取り組めず、値段を下げてもなかなか売れなくなってしまいます。
また、こうした事情から、実際にはもっと多くの不動産を手放したいオーナーがいるものと推測できます。
今後は首都圏でも「激安不動産」が現れる?
越後湯沢などで、竣工当時のスキーブームが沈静化し、利用者が減り、近くに所在するリゾートマンションで激安物件が多数売りに出ているのは有名な話です。
また、リゾートに限れば、最近は各地のホテルの様な施設が利用できる会員制リゾートなどが増えたことによる別荘離れも影響していると考えられます。
これまでの激安不動産は地方、あるいは別荘などのリゾート物件がほとんどでした。
今後はリゾートでなく、首都圏近郊でも交通利便性が低く、人口が減少しているエリアや維持管理状態が悪い物件では、購入希望者が減少し、価格が下落します。
さすがに都心部では、100万円を切るような物件は今後もなかなか出ないでしょう。
都内中心部やその周辺の通勤などが可能なエリアでは、一定の需要は維持されると思います。
しかし、現在は高齢化の進行により今後、相続件数は増加しています。
昨今は親と同居しない「核家族化」が進行しています。
親が亡くなる事で空き家となってしまう不動産が増えることは間違いありません。
人口減少社会に入っている日本では今後世帯数も減少していきますが、新築住戸は相変わらず供給され続けています。
今後20年、30年の間に世帯数の減少で不動産の需要が減り、競合する不動産が増え、多くの不動産の価格が下がることは間違いないでしょう。
激安不動産にならない物件選びが重要
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リタイア後は田舎暮らしをしたい、都会を離れのんびり暮らしたい、といった希望をお持ちの方には掘り出し物の「激安不動産」が見つかるかもしれません。
売却不動産として市場に出ていなくても「買いたい人がいるならば売却を検討する」と考えている不動産オーナーも少なくないと思います。
本気で探せば、永住用あるいは別荘として十分に使える物件も見つかるでしょう。
ご自身でDIYでリフォームすることを楽しめる方なら特におすすめです。
一方、現在使っておらず、今後も使う予定のない不動産をお持ちの方は、早めに活用、あるいは処分する方法を考えたほうが良いと思います。
売却を選択する場合、市場に出せば売れる時代ではなくなりました。
将来に負担だけを残すことのないよう、手放す方法も戦略的に検討しなければいけなくなっています。
何も手を打たないまま、相続が発生した場合は残される家族に負担を先送りすることにもなりかねません。
不動産は活用されてこそ価値のあるものです。
これから不動産を購入しようとする方も、20年後、30年後に購入した不動産が価値を認めてもらえない「激安不動産」にならないような物件選びが必要です。(執筆者:西山 広高)