
帰省の交通費に、旅行やレジャー、猛暑で伸びる電気代。夏は出費が重なる季節ですが、そこに家電の故障や急な入院が乗ると、家計は一気に苦しくなります。慌てて借りる前に確かめたい公的な制度と、支払いに当たる順番を、家計目線で整理します。
夏に出費がかさむのは、額より重なり方
夏に家計が苦しくなるのは、特別に高い買い物をしたからとは限りません。帰省の交通費とおみやげ代、旅行やレジャーの費用、猛暑で伸びる電気代。ひとつずつは想定の範囲でも、同じ月に3つ4つと並んだ瞬間に、いつもの家計の型からはみ出します。
やっかいなのは、夏の出費のなかに性質の違う2種類が混ざっていることです。ひとつは帰省や旅行、光熱費のように毎年ほぼ同じ時期に来るもので、去年も一昨年もあった支出です。もうひとつは家電の故障や家の修繕、急な入院、思いがけない冠婚葬祭のように、予定表に書きようがなかった支出です。前者は時期が読める分だけ積み立てで備えられますが、後者はそうはいきません。まずは自分の家計にどちらがどれだけ乗っているのかを分けて見るところから始めます。
とくに読みにくいのが、急な入院にかかるお金です。公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2025年度)によると、直近の入院時の1日あたりの自己負担費用の平均は24,300円でした。これは治療費や食事代、差額ベッド代だけでなく、見舞いに来る家族の交通費や衣類、日用品費までを含んだ金額で、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額です。同じ調査で費用の分布を見ると20,000円未満が約6割を占めますから、平均額そのままに身構える必要はありません。ただ、入院は治療費の外側にある細かい出費がまとめて出ていく場面だと知っておくと、直面したときに落ち着いて動けます。
足りないときに当たる4つの順番
出費が想定を超えたとき、多くの人はまず「どこから借りるか」を考えます。ですが当たる順番を変えるだけで、最終的な負担はかなり変わります。次の4段階を、上から順に当たっていきます。
はじめに、支払いの期日と金額を1枚に書き出します。頭のなかだけで数えていると、本当は来月に回せる支払いまで今月の不足に数えてしまいがちです。書き出すだけで、実際に足りない額はたいてい思っていたより小さくなります。
次に、手元にあるもので埋められないかを見ます。使っていない家電やブランド品をリサイクルショップやフリマアプリで売る、この夏の旅行やレジャーの予定を1つ落とす、といった調整です。まとまった額にはならなくても、不足の一部を削れれば、次の段階で借りる額そのものが小さくなります。
そのうえで、公的な貸付制度に当たります。国や自治体の制度は無利子か低い利率のものが多く、条件の面で先に検討する価値があります。
そして最後に、それでも足りない分だけを民間の借入で埋めます。この順番を守るほど、借りる額も支払う利息も小さくなります。
まず確かめたい公的な貸付制度
公的な貸付の中心にあるのが、生活福祉資金貸付制度です。都道府県社会福祉協議会が実施主体となり、お住まいの地域の市区町村社会福祉協議会が窓口になっています。対象は世帯単位で、必要な資金を他から借り受けることが困難な低所得者世帯(市町村民税非課税程度)、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方などが属する障害者世帯、65歳以上の高齢者が属する高齢者世帯が挙げられています(厚生労働省)。
資金は総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類に分かれます。夏の突発的な出費でまず気になるのは福祉資金でしょう。なかでも緊急小口資金は、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用という位置づけで、無利子かつ連帯保証人も不要とされています。
利子の条件も押さえておくと、判断が速くなります。福祉費では連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合は年1.5%です。連帯保証人は原則として必要ですが、立てられない場合も貸付は可能とされています。高校や大学の修学、入学の費用に当たる教育支援資金は無利子で、こちらも連帯保証人は不要です。
ひとり親家庭には別の枠があります。母子父子寡婦福祉資金貸付金は、配偶者がおらずにこどもを扶養している人などを対象に、修学資金や技能習得資金、就職支度資金、医療介護資金、住宅資金など12種類が用意されています。利子は基本的に無利子または年利1.0%です(こども家庭庁)。
困りごとと窓口の対応は、次の表にまとめておきます。
困りごと | 先に当たる窓口 | 制度・仕組みの名前 |
緊急かつ一時的に生計の維持が難しい | 市区町村社会福祉協議会 | 生活福祉資金のうち緊急小口資金 |
生業や技能習得など暮らしの立て直しに費用が要る | 市区町村社会福祉協議会 | 生活福祉資金のうち福祉資金(福祉費) |
高校や大学の修学、入学の費用が足りない | 市区町村社会福祉協議会 | 生活福祉資金のうち教育支援資金 |
ひとり親家庭で修学や就職、医療介護の費用が要る | お住まいの自治体のひとり親家庭の相談窓口 | 母子父子寡婦福祉資金貸付金 |
貸金業者から借りる前に相手を確かめたい | 金融庁の登録貸金業者情報検索サービス | 貸金業の登録の確認 |
民間から借りるときの法律のルール
公的な制度で足りないときには、民間の借入を検討する場面もあります。ここで知っておきたいのが、法律が定めている2つのルールです。
1つ目は総量規制です。金融庁の説明では、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなります。貸金業者は指定信用情報機関で借入残高を確認し、年収は申告や必要に応じた年収証明書類で把握します。1社から50万円を超えて借りるとき、または他社分と合わせて100万円を超えて借りるときは、年収を証明する書類の提出が必要です。これは返せない額まで借りてしまう事態を制度の側で止める仕組みですから、通らなかったことを個人の失格と受け取る必要はありません。
2つ目は上限金利です。利息制限法の上限金利は貸付額に応じて15%から20%で、これを超えると民事上無効になります。また、出資法で定める上限金利は年20%で、これを超える貸付けは出資法違反となり罰則の対象です。
もうひとつ、借りる相手が誰なのかの確認も欠かせません。貸金業を営む者は、主たる営業所等の所在地を管轄する財務局長または都道府県知事の登録を受けなければなりません。金融庁の登録貸金業者情報検索サービスを使えば、登録番号や商号から登録の有無を調べられます。登録を確認できない相手からは借りない、と決めておくのが確実です。
見落としやすいのが、SNSを入口にした個人間融資です。金融庁は、SNSなどを通じて見知らぬ人同士が知り合い金銭の貸し借りをする形態について、個人を装ったヤミ金融業者による違法な高金利貸付けや個人情報悪用のリスクを挙げています。甘い融資話に惑わされることなく、無登録業者や高金利業者といった違法な金融業者を利用しないことが一番の防衛策だとしています。
秋のうちに打っておく、来年の夏への手
夏が終わったら、同じことを来年繰り返さないための手を打っておきます。ここは金額の大小より、仕組みで自動的に効かせるのがこつです。
はじめに、お金の流れを見えるようにします。家計簿が続かないという方も、レシートを撮るだけで記録できるアプリを使えば負担は小さくなります。月に1度、支出の大きいものから順に眺めて、削れるものがないかを確かめる程度で十分です。
次に、固定費に手を付けます。毎月自動的に出ていくお金を1回減らせば、その効果は翌月以降ずっと続きます。スマホの料金プラン、電気やガスの契約、使っていないサブスクの解約。ここは我慢を必要としない分、節約のなかでも続きやすい領域です。
そのうえで、突発の出費に備える口座を分けます。生活費と同じ口座に残しておくと、余った分はいつのまにか使われてしまいます。収入が入ったらすぐ別の口座へ移す自動積立を設定し、この口座のお金は突発の出費以外には使わないと決めておきます。
最後に、毎年決まって来る大きな支払いをならしておきます。自動車税や年払いの保険料、車検、賃貸の更新料などは、金額はともかく「いつ来るか」は分かっている支出です。前回いくらかかったかを見て、年間の総額を12で割った額を毎月積み立てておけば、請求が届いた月に急な出費として慌てることはなくなります。
夏の出費は、来年もほぼ同じ顔でやってきます
夏に家計が崩れるのは、意志が弱いからではありません。同じ月に出費が重なる季節だからです。足りないと気づいたら、書き出す、手元で埋める、公的な貸付に当たる、最後に民間という順番を守るだけで、負う利息は小さくなります。秋のうちに固定費と積立の仕組みを整えておけば、来年の夏は同じ場所でつまずかずに済みます。迷ったら、市区町村社会福祉協議会の窓口に相談してみてください。


