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賃貸の更新料は法律で決まっていない。それでも払う義務が生じる理由

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賃貸の更新料は法律で決まっていない。それでも払う義務が生じる理由
賃貸の更新料は法律で決まっていない。それでも払う義務が生じる理由

更新の案内が届き、更新料の欄で手が止まった経験はないでしょうか。実は更新料を定めた法律はなく、特約がなければ支払う義務も生じません。それでも契約書に書いてあれば話は変わります。最高裁が示した線引きをたどって、自分の契約がどちら側なのかを確かめてみてください。

更新料に法律上の根拠がないという出発点

賃貸借という契約が何で成り立つのかは、民法601条が定めています。貸主が物を使わせることを約束し、借主が賃料を支払うことと契約終了時にそれを返すことを約束すると、それだけで効力が生じます。条文が挙げているのはここまでで、更新料は登場しません。

借地借家法にも更新料の規定はありません。消費者庁が公表している消費者契約法の逐条解説も、一般的な法理の例として、賃貸借契約において特約がなければ賃借人は更新料を支払う義務は負わない、という点を挙げています。

つまり出発点は「払わなくてよい」です。更新料は法律が課している負担ではなく、契約で足された負担だということになります。

契約書の定めが支払義務に変わる理由

では、なぜ現実には多くの人が払っているのでしょうか。ここを正面から扱ったのが、最高裁判所が平成23年7月15日に出した判決です。居住用の建物を借りていた人が、更新料の条項は消費者契約法10条によって無効だと主張し、払い済みの更新料の返還を求めた事案でした。

最高裁はまず、更新料の性質を説明しています。更新料は賃料とともに貸主の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払によって借主は円満に物件の使用を続けられます。そこから、更新料は一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を持つものと解するのが相当である、と結論づけました。

そのうえで最高裁は、更新料条項が賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により借主に負わせるものである以上、消費者契約法10条が定める前半の要件、つまり消費者の義務を加重する条項には当たると認めました。ここまでは借主の言い分どおりです。

分かれ目は後半にありました。10条で無効になるには、その条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものでなければなりません。最高裁は、更新料の支払におよそ経済的合理性がないとはいえないこと、一定の地域で期間満了の際に更新料を支払う例が少なからずあることは公知であることなどを挙げ、この要件までは満たさないと判断しました。

有効と無効を分ける2つの条件

ここを「更新料はいつでも有効」と読んでしまうと、判決を取り違えます。最高裁が出した結論には、はっきりと条件が付いているからです。

判決の言い回しはこうです。賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条によって無効とはいえない、というものです。裏返すと、記載があいまいだったり、額と期間の釣り合いが取れていなかったりすれば、無効となる余地は残されています。

賃貸の更新料は法律で決まっていない。それでも払う義務が生じる理由

そもそも契約書に定めがなければ、更新料を支払う義務は初めから生じません。定めがあって初めて、額の妥当性が問題になります。

この事案では、賃料が月額3万8000円、更新料が賃料の2か月分、更新される期間が1年という条件でした。最高裁はこの組み合わせについて、特段の事情があるとはいえないとしています。見られているのは金額そのものではなく、賃料と更新期間との釣り合いだということです。

法定更新になったときの扱い

更新には、当事者が話し合って更新する形のほかに、借地借家法が自動的に働く形があります。同法26条1項は、期間の定めがある建物の賃貸借で、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなすと定めています。ただし、そのときの期間は定めがないものとされます。しかも同法28条により、貸主から更新を断る通知をするには正当の事由が要ります。借主の側は、思っている以上に守られています。

気になるのが、この法定更新のときにも更新料がかかるのかという点です。先ほどの最高裁の事案では、契約書が「法定更新であるか、合意更新であるかにかかわりなく」1年経過するごとに更新料を支払う、と定めていました。実際に法定更新となった回の更新料が未払いになり、最高裁は貸主の請求を認めています。

見落としたくないのは、これが契約書にそう書いてあった事案の結論だという点です。契約書に法定更新の場合の定めがなければ、どう扱われるかは条項の読み方の問題になり、一律の答えはありません。手元の契約書に法定更新という言葉があるかどうかを、まず確かめてみてください。

支払わなかった場合に実際に起きること

支払わないと即座に強制退去、という説明を見かけますが、そこまで単純ではありません。

契約に定めのある更新料を払わなければ、それは債務の不履行です。民法541条は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは契約を解除できると定めています。ただし同条にはただし書があり、その期間を経過した時における不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除はできません。

先ほどの平成23年の事案でも、実際に起きたのは退去ではありませんでした。貸主は未払いの更新料7万6000円と遅延損害金の支払を求め、最高裁はその請求を認めています。決着は金銭の支払でした。

明渡しの場面については、令和4年12月12日の最高裁判決も参考になります。家賃債務保証業者の契約書にあった、賃料等の未払が一定額に達したときに無催告で賃貸借契約を解除できる条項と、一定の事情があれば明渡しがあったものとみなす条項について、いずれも消費者契約法10条にいう条項に当たると判断したものです。判決は、借主が明渡義務を負っていないのに、明渡請求権が法律に定める手続によることなく実現されたのと同様の状態に置かれるのは著しく不当だ、と述べています。

とはいえ、放っておいてよいという話にはなりません。契約を続けたいなら期日までに払い、事情があって難しいなら早めに貸主や管理会社へ伝えておきましょう。

更新料と消費税の関係

更新料は非課税だ、という言い方も広く出回っています。これは正しいのですが、範囲を取り違えると誤解のもとになります。

国税庁は、住宅に係る賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金、更新料などのうち返還しないものは非課税になると説明しています。住まいとして借りている部屋の更新料に、消費税は上乗せされません。一方で事務所や店舗のように事業用として借りている建物では扱いが逆になり、返還しないこれらの金銭は権利の設定の対価として課税の対象です。同じ更新料でも、何のために借りているかで結論が変わります。

注意したいのは、この非課税があくまで消費税の話に限られる点です。所得税や住民税が軽くなるわけではありませんし、家計から出ていく支出であることに変わりはありません。

あわせて押さえておきたいのが、更新料と敷金の性質の違いです。敷金は借主の債務を担保する目的で預けるお金で、民法622条の2により、賃貸借が終わって物件を返したときには未払債務を差し引いた残額が返ってきます。これに対して更新料は、契約を続けるための対価等の性質を含むお金であり、退去のときに戻ってくるものではありません。

更新の案内が届いたら開く場所

更新料は法律が課すものではなく、契約書が生む負担です。だから確かめる先も契約書になります。更新料の有無と金額、更新される期間、法定更新のときの扱い。この3点を押さえれば、払う義務があるのかどうかはおおむね見えてきます。額と期間の釣り合いに納得できないときは、自治体の住宅相談窓口や弁護士などの専門家に相談してみてください。

《編集部》
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執筆者: 編集部 編集部

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