
お盆の帰省で実家を片づけていると、思いがけないものが出てくることがあります。仏壇の引き出しにしまわれた、父の字で表書きされた封筒。中身は遺言書かもしれません。封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開けると、5万円以下の過料の対象になります。開ける前にどこへ持っていけばよいのか、順番を確かめておきましょう。
仏壇の引き出しから出てきた封筒
「父の字で『遺言書』と書いてありました。開けていいものか、手が止まって。」お盆に実家を片づけていた50代の姉弟は、封をされた封筒を前に顔を見合わせました。中身が分からなければ、何をどう進めればよいのかも決まりません。その場で開けて確かめたくなるのが自然な流れです。
けれども、封印のある遺言書の扱いは法律で決まっています。開ける場所も、立ち会う人も指定されています。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で開ける
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。保管者がいない場合に相続人が遺言書を発見したときも同じです(民法1004条1項)。そのうえで、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封することができないとされています(同条3項)。
遺言書を提出することを怠り、検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外で開封した人は、5万円以下の過料に処するとされています(民法1005条)。
開けてしまっても、遺言そのものは無効にならない
誤解されやすいのが、封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開けた瞬間に遺言が使えなくなるという話です。民法1005条が定めているのは過料であって、遺言の効力を失わせる規定ではありません。すでに開けてしまった場合でも、そのまま家庭裁判所へ提出して検認を受けることになります。
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、偽造や変造を防ぐための手続です。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は遺言書1通につき収入印紙800円と、裁判所ごとに定められた郵便料がかかります。
法務局に保管されている自筆証書遺言は、検認が要らない
遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言については、民法1004条1項の規定は適用されません(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。法務省も、この制度を使えば相続開始後に家庭裁判所における検認が不要になると案内しています。保管の申請の手数料は、申請1件(遺言書1通)につき3,900円です。公正証書による遺言も、検認の対象から外れています(民法1004条2項)。
なお、遺言の制度は令和8年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律で見直しが決まり、押印の任意化や、電子データ等で作成し法務局において保管する保管証書遺言の創設が盛り込まれました。ただし、押印の任意化等は公布の日から起算して1年を超えない範囲内、保管証書遺言の創設等は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において、それぞれ政令で定める日から施行されます。本文で扱う検認・開封の手順は、令和8年8月6日時点では現行のままです。
封を切る前に、置き場所を決める
遺言書らしい封筒が出てきたら、開けずにそのまま保管し、家庭裁判所へ提出するのが手順です。封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開けてしまっても遺言が無効になるわけではありませんが、過料の対象にはなります。中身を確かめたい気持ちは、いったん抑えてください。まずは遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に問い合わせるところからです。


