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兄弟だけで決めた遺産分割。認知症の相続人を外すと、その協議は無効になる

シニア 終活
兄弟だけで決めた遺産分割。認知症の相続人を外すと、その協議は無効になる
兄弟だけで決めた遺産分割。認知症の相続人を外すと、その協議は無効になる

お盆に実家へ集まり、そのまま相続の話になる家は少なくありません。兄弟のあいだで分け方がまとまっても、相続人のなかに判断能力を失った人がいる場合、その人を外した話し合いは法律上の効力を持ちません。分かれ目になるのは認知症という診断名ではなく、書類に署名したその時に本人の意思能力があったかどうかです。

父の相続で母の署名が取れない50代兄弟の戸惑い

「母の分は、私たちが代わりに書けばいいと思っていました。」父を亡くした50代の兄弟は、遺産分割協議書を前にそう振り返ります。相続人は母と子ども2人。母は数年前から物忘れが進み、書類の中身を尋ねても返事がかみ合いません。

分け方そのものは早々に決まっていました。実家は同居していた側が引き継ぎ、預金は残りで分け、母の生活費は子どもたちで見る形です。話はまとまったつもりでしたが、金融機関の窓口に協議書を出したところで、手続きがそこから動かなくなります。

協議を止めるのは診断名ではなく、意思表示をした時の意思能力

遺産分割は、共同相続人が協議して遺産の全部または一部を分けるものです(民法907条1項)。ここでいう共同相続人には、判断能力の状態にかかわらず相続人が全員含まれます。1人を外して残りだけで決めても、その協議は無効です。

では本人を席に着かせればよいかというと、そうではありません。民法は「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と定めています(3条の2)。見るのは意思表示をしたその時点であって、認知症という診断名そのものではありません。程度や日によって受け答えができる場合もあり、一律に線が引かれるわけではない点は押さえておきたいところです。

家族がやってしまいがちな3つの対応を並べると、行き先はこうなります。

兄弟だけで決めた遺産分割。認知症の相続人を外すと、その協議は無効になる

本人の意思に基づかず代わりに署名すると、私文書偽造等の問題になる

いちばん危ういのが3つ目です。刑法は、行使の目的で他人の印章等(印章や署名)を使い、権利、義務または事実証明に関する文書等を偽造した者を、3か月以上5年以下の拘禁刑に処すると定めています(159条1項)。遺産分割協議書は、まさに権利や義務に関する文書等にあたります。偽造した文書等を実際に使えば、同じ刑が科されます(161条1項)。

善意のつもりでも、後から相続人の1人が異を唱えれば、協議のやり直しだけでは済みません。ここは家族仲の問題ではなく、書類の作り方の問題です。

止まったと分かったら、家庭裁判所を挟む

兄弟だけで押し切る道はありません。進めるには家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、成年後見人を選んでもらうことになります。申立てができるのは本人や配偶者、四親等内の親族などで、申立先は本人の住所地の家庭裁判所です。成年後見人が本人と同じ相続の共同相続人になるなど利益相反がある場合は、家庭裁判所が選任した特別代理人等(監督人が選任されている場合は監督人)が本人を代理します。分け方の相談を始める前に、まずこの入口を家族で確かめてください。

《編集部》
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執筆者: 編集部 編集部

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