
実家に通って親の介護を担っていると、自分の財布から出ていくお金が積み上がります。せめて親のお金から出したい、兄弟にも分けてほしいと考えるのは自然なことです。ただ、受け取り方によっては贈与税の対象になり、相続のときの取り分にも響きます。分かれ目は金額ではなく、渡し方のほうにあります。
兄弟の中で自分だけが実家に通っている
「毎週末は実家です。正直、うちだけが負担しているとは思っています」
親の介護を担う40代の会社員は、そう話します。兄弟は2人とも遠方に暮らし、帰ってくるのは年に数回。おむつ代も交通費も、まず自分が立て替えます。親の通帳は預かっていますが、そこから自分の分を引いてよいのかは分からないままです。
親名義の預金を本人の意思を離れて動かすと、使途を説明できないまま残高が減ります。相続のときに兄弟から問われるのは、たいていこの部分です。判断能力が落ちてきているなら、任意後見や家族信託、金融機関の代理人の届出といった手当てを先に置いておく方法もあります。
親から受け取るお金は、都度かどうかで分かれる
税の扱いは、金額ではなく渡し方で決まります。相続税法は、扶養義務者相互間で生活費または教育費に充てるためにした贈与のうち、通常必要と認められるものは贈与税の課税価格に算入しないと定めています(21条の3第1項2号)。ここでいう扶養義務者には、配偶者、直系血族、兄弟姉妹などが含まれるため(同法1条の2第1号、相続税法基本通達1の2-1)、子も兄弟も当てはまります。
ただし国税庁は、非課税になるのは必要な都度直接これらに充てるためのものに限られるとしています。生活費の名目で受け取っても、預金したり株式や不動産の買入資金に充てたりすれば贈与税がかかります。

精算する道は、相続のときに用意されている
民法は、相続人の中に被相続人の療養看護その他の方法によって財産の維持または増加について特別の寄与をした人がいるとき、その分を寄与分として相続分に加えると定めています(904条の2)。話し合いがつかなければ、寄与の時期や方法、程度などを考慮して家庭裁判所が定めます。
相続人ではない親族が担っていた場合の受け皿もあります。無償で療養看護をして特別の寄与をした親族は、相続人に対して特別寄与料を請求できます(同1050条)。ただし家庭裁判所への請求には期限があり、相続の開始および相続人を知った時から6か月、相続開始の時から1年を過ぎると使えません。
負担そのものを軽くする仕組みも別にあります。利用者負担が著しく高額になったときに市町村が支給する高額介護サービス費(介護保険法51条)や、仕事を休んだときの介護休業給付金が代表です。
出したお金は、その日のうちに書き残す
受け取ってよいかどうかは、金額ではなく渡し方と記録で決まりました。都度の生活費として出してもらい、領収書と使途を残します。立て替えた分は日付とともに控えておきます。この積み重ねが、贈与税の説明にも、寄与分を主張する材料にもなります。通帳を預かった日から始めておきましょう。


