
お盆に親族が集まる時期は、これからのことを考えるきっかけになります。長く一緒に暮らしていれば、いつかは相手に財産が渡ると思われがちです。しかし民法が相続人とする配偶者は、婚姻の届出をした相手だけです。届出がないかぎり、法律は事実婚の相手を相続人として扱いません。
相続人になるのは、届出をした配偶者と血族
民法は、亡くなった人の配偶者は常に相続人になると定めています(民法890条)。ここでの配偶者は婚姻の届出をした相手を指すため、何十年連れ添っていても、事実婚の相手はこの枠に入りません。財産は子(代襲する孫などを含む)、子や代襲する孫などがいなければ父母などの直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹(代襲するおい・めいを含む)へと渡ります。
血族の相続人がだれもいない場合には、別の道が残されています。相続人のあることが明らかでないときは家庭裁判所が相続財産の清算人を選び、公告をしても権利を主張する人が現れなければ、生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人が特別縁故者として財産の分与を請求できます(民法958条の2)。ただし家庭裁判所への請求が要るうえ期限もあり、認めるかどうかも家庭裁判所の判断です。相続人がいる(相続人不存在でない)場合には、この道はそもそも開きません。
事実婚のあいだに生まれた子は扱いが違います。父が認知をすれば(民法779条)、その子は父の相続人になります。
財産を渡す本筋は遺言。方式で手間が変わる
遺言を書けば、相続人でない人にも財産を渡せます(民法964条)。ここでは、主に検討される形を次の3パターンで整理します。作るときの要件も、亡くなった後の手続きも変わります。

自書が原則ですが、添付する財産目録だけは自書でなくても構いません(自書でない財産目録の各ページに署名と押印が要ります)。法務局の保管制度では、遺言書保管官が民法の定める形式に適合するかを外形的に確認します。ただし、この制度は遺言書の有効性まで保証するものではありません。公正証書遺言なら公証人が内容を文章にまとめ、原本が公証役場に保管されます。
遺言を書いても越えられない線がある
まず遺留分です。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり(民法1042条)、侵害された人は金銭の支払いを請求できます(民法1046条)。子や直系尊属がいるなら、全財産を相手へ遺贈しても後から請求を受けることがあります。相続人が兄弟姉妹だけなら遺留分はなく、この請求は起きません。
税の扱いも変わります。事実婚の相手は一親等の血族でも配偶者でもないため、遺贈で財産を受け取ると相続税額に2割が加算されます。死亡保険金の受取人に指定できる場合もありますが、内縁の相手を受取人にできるかは保険会社によって取扱いが異なります。相続人以外の人が受け取った死亡保険金には、非課税枠の適用もありません。
渡す相手を決めたら、書面の形まで決めておく
事実婚を選ぶ理由は人それぞれですが、財産の話だけは制度に合わせて動くほうが確実です。相続人になる人を確かめ、遺言の方式を決め、遺留分と税の負担まで見込んでおきます。この順で進めれば、やることは自然と絞られます。方式に迷ったら公証役場へ、法務局での保管制度の手続きに迷ったら法務局へ、内容に迷ったら弁護士・司法書士などの専門家へ相談できます。


