
退職の手続きというと、健康保険や雇用保険に目が向きます。その一方で、勤務先で積み立ててきた企業型確定拠出年金(企業型DC)にも動かす期限があることは、あまり知られていません。期限を過ぎると、自分で選んでいない場所へ資産が移されます。いつまでに、どこへ移すのかを退職前に決めておきましょう。
起算は資格を失った月の翌月から6か月
確定拠出年金法83条1項は、企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6か月以内に所定の移換がされなかった個人別管理資産を、国民年金基金連合会に移換すると定めています。
読むうえで大切なのは、数え始めが退職した月そのものではなく、企業型年金加入者の資格を失った月の翌月だという点です。9月に資格を失ったなら、10月から数えて6か月以内が持ち時間になります。半年あると思うと長く感じますが、転職の初日から新しい仕事が始まり、書類は後回しになりがちです。前の勤務先や記録関連運営管理機関から届く書類・通知が関係することもあるので、実際に動かせる期間はもっと短くなります。
期限の管理を自分でしなければならないのは、この資産が会社のものではなく、加入していた人ひとりずつのものだからです。退職時に会社が代わりに移してくれるわけではありません。
移す先は、次にどう働くかで決まる
代表的な移換先は、退職後の立場によって次のように分かれます。
企業型DCからは、本人の申出により、iDeCo、通算企業年金、転職先で導入している企業型DC、条件を満たすDBへ持ち運びが可能です。

転職先に企業型DCがあっても、加入資格を満たさないことがあります。その場合はiDeCoや通算企業年金など別の移換先を検討することになるので、内定の段階で人事の担当者に確認しておくと迷いません。
iDeCoへ移した場合は、iDeCoの加入資格があれば掛金を出し続ける加入者になることができます。掛金を出さずに運用だけを続ける運用指図者になる選択もできます。収入が落ち着くまでは運用指図者にしておき、あとから拠出を始めるという進め方もできます。
6か月を過ぎると、置き場所が変わる
期限までに移換や脱退一時金の請求をしなかった資産は、国民年金基金連合会へ移されます。この状態では資産は運用されず、管理手数料は差し引かれ、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間にも算入されません。放っておくほど不利になる仕組みです。
まとまった資産だから現金で受け取りたい、と考える人もいます。脱退一時金という形はありますが、受け取れる場合は法律で厳しく限られていて、原則は移して続けることになります。退職金のように自由に引き出せるお金ではない、と考えておくほうが実態に近いでしょう。
移し忘れに気づいたときは、そこで止まらずに手続きを進めれば、企業型DCやiDeCoなどへ移すことはできます。ただし移されているあいだの期間は取り戻せないので、早いほど損が小さくなります。
退職日が決まった日に、確認しておきたいこと
企業型DCの移換は、次の勤務先に企業型DCがあるかどうかで進め方が変わります。退職日が決まったら、まず転職先の制度と加入資格を確かめ、なければiDeCoや通算企業年金など、移換先を選ぶ準備に入ってください。数え始めは、企業型年金加入者の資格を失った月の翌月です。前の勤務先から届く書類をなくさないようにして、余裕をもって手続きを終えましょう。


