
子や孫のために、その子の名義で預金を積み立てている家庭は少なくありません。ところが、渡したつもりのお金が贈与として成立していないことがあります。分かれ目は金額の大きさではなく、受け取る側が承諾していたかどうかです。渡し方を、いま一度確かめておきましょう。
孫の名義で毎年積み立ててきた祖父が、渡す前に気づいたこと
「孫が生まれた年から、毎年その子の名義で積み立ててきました。」70代の男性は、二人の孫のためにそれぞれ口座を用意し、こつこつ入金を続けてきたと話します。通帳は自宅の引き出しにしまったままで、孫にも、その親である娘夫婦にも伝えていません。
まとまった額になったところで渡すつもりでしたが、この積み立ては贈与として成立しているのか。ここが、あとから問題になりやすいところです。
贈与は契約。片方の意思だけでは効力が生じない
民法549条は、贈与について、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生ずると定めています。つまり、あげる側の意思ともらう側の受諾が揃って初めて成立する契約です。
冒頭の男性のように、受け取る側が積み立ての存在を知らなければ、受諾のしようがありません。渡したつもりでも、法律の上では贈与が始まっていないことになります。
孫がまだ幼い場合はどうか。親権を行う者は、子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について子を代表します(民法824条)。幼い孫本人が理解していなくても、親権者である娘夫婦が代わって受諾していれば、贈与として成立し得ます。裏を返せば、その親にも伝えていない状態では、代わって受諾する人もいないことになります。
成立を確かめる4つの視点
渡し方を点検するときは、次の順に見ていくと抜けが見つかります。

書面の有無は、成立そのものだけでなく、やめられるかどうかにも効いてきます。書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分についてはこの限りではありません(民法550条)。渡し終えた分は取り戻せない一方、約束しただけの段階なら白紙に戻せるということです。
もうひとつ、渡す側の状態も見ておきたいところです。法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とされます(民法3条の2)。判断能力が落ちてからまとめて動かすと、そこが争点になりかねません。
渡すたびに、もらう側の手元へ記録を残しておく
積み立てを続けているなら、渡すその年ごとに、受け取る側が承諾したことを形にしておきましょう。贈与契約書を交わす、幼い子であれば親権者が署名する、といった手当てで足ります。まとまった額になってから一度に整えようとすると、過去のやりとりを説明する材料が残っていません。年に一度、渡した側と受け取った側の双方で確かめる場をつくることから始めてみてください。


