
お盆に帰省して、親の物忘れが増えたと感じた人もいるかもしれません。通帳とカードを預かっていれば安心と思いがちですが、銀行の窓口では家族でも本人の預金を引き出せません。代理人カードを作ってあっても、判断能力が落ちた後にどこまで通るかは金融機関しだいです。親の預金を家族が管理するために、元気なうちにできることと、あとから残る道を紹介します。
遠方の親の通帳を預かる50代会社員のつまずき
「通帳もキャッシュカードも預かっているので、いざとなったら下ろせます。」遠くに住む親の生活費を気にかけている50代の会社員が、そう話すことは珍しくありません。帰省のたびに同じ話を繰り返す親を見て、そろそろ施設の費用も必要になるだろうと考えている段階です。
ところが金融機関の窓口は、そうは動きません。全国銀行協会が示した考え方は、銀行の預金は基本的には本人の資産であり、払い出す場合には預金者本人の意思確認が必要となるため、家族といえども預金者の預金を払い出すことはできない、と明記しています。よく口座が凍結されたと言われる状態ですが、どの取引がどこまで止まるかは金融機関の判断によります。
代理人カードが届く範囲は、金融機関ごとに違う
家族が入出金できるカードを追加で発行する仕組みや、代理人を届け出る手続きは、多くの金融機関が用意しています。ただし名称も使える範囲も同じではありません。共通しているのは、本人が申し込んで本人が代理権を与えるという点です。つまり、本人の判断能力がしっかりしているうちにしか用意できません。
判断能力が低下した後もそのまま通るかどうかは、その手続きが代理権の届出として扱われているかで変わります。全国銀行協会は、低下後の取引を、成年後見人等による法定代理、本人から有効に代理権を与えられ届出も済んでいる任意代理、どちらにも当たらない無権代理に整理しました。無権代理は極めて限定的な対応と位置づけられ、成年後見制度の利用を求めることが基本とされています。
先に用意する手と、あとから申し立てる手

任意後見契約は公正証書で結ぶことが法律で決まっており、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が生じます。判断能力が落ちてから動く法定後見は、本人や配偶者、四親等内の親族などが本人の住所地の家庭裁判所へ申し立て、審判までおおむね1か月から2か月程度かかります。財産の管理を託す家族信託という選択肢もありますが、これも契約できるのは判断能力があるうちです。
帰省のうちに、口座の棚卸しから始める
親の預金を家族が動かせるようにする手立ては、判断能力があるうちに本人の意思で用意するものばかりです。落ちてから残るのは家庭裁判所を通す道で、時間も手間もかかります。顔を合わせたときに、どこにどんな口座があるかを一緒に確かめ、代理人の届出や任意後見の話を一つ持ちかけてみてください。それだけで、いざというときに選べる手が変わります。


