
お盆に親族が集まっても、遺産の話がまとまらないことがあります。話し合いが続いているうちは、申告も待ってもらえそうに思えます。ですが相続税の期限は、分割の進み具合とは関係なくやってきます。しかも痛いのは税額そのものより、使えるはずだった軽減が外れてしまうことです。
実家の行き先が決まらないまま四十九日を過ぎた50代兄妹
「兄と話すたびに、実家をどうするかで止まってしまうんです。」関東で働く50代の会社員は、地方に住む父が春に亡くなってから、兄と何度も連絡を取り合ってきました。預金の分け方はおおよそ固まったものの、誰も住まなくなった実家を売るのか残すのかで意見が割れたままです。
そのうちに気になってきたのが、相続税の申告でした。相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。国税庁は、相続財産が分割されていない場合であってもこの期限までに申告しなければならず、分割されていないことで期限が延びることはない、と明記しています。期限までに申告しなければ、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。話し合いの長さが、税務署側の時計を止めてくれるわけではありません。
いったん民法の相続分で割り振って納める
では、決まらないまま期限が来たら何を出すのか。分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税を計算し、申告と納税をします。まだ誰のものとも決まっていない財産を、法律上の取り分でいったん割り振って数字を作るかたちです。
この申告でも、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除を差し引く流れは変わりません。差がつくのはその先です。分割が終わっていることを前提にした軽減の仕組みが、この時点では働きません。財産の行き先は決まっていないのに、納める額だけが先に大きく出ます。ここが未分割のまま期限を迎えたときのつらさです。
分割が終わっていないと外れる取り扱い

見落としやすいのが、外れ方が同じではないことです。配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添えて期限内に出しておけば、原則として申告期限から3年以内に分割された後、分割の翌日から4か月以内の更正の請求で適用を受ける道が残ります。一方、物納は協議分割が未了だと所有権の帰属が確定していないとみなされ、管理処分不適格な財産に当たるとして認められません。相続財産の多くが不動産という家ほど、ここが重く効いてきます。
納税資金は自己資金だけで組み立てない
現金が足りなくても、手は残っています。延納を申請するときの担保は、相続で取得した財産に限らず、相続人固有の財産や第三者の財産でも提供できます。預貯金も、分割前に相続開始時の残高の3分の1に法定相続分を掛けた額まで、金融機関ごとの上限の範囲で単独で払い戻せます。物納を考えるなら、その財産だけ先に分割を確定させる手もあります。期限から逆算した段取りを、早めに税理士へ相談してください。


