
お盆の帰省で相続の話が出たとき、生命保険の死亡保険金も遺産として分け合うものだと思っていませんか。受取人が指定された保険金は、受け取った人の固有の財産として渡り、遺産分割の話し合いには乗りません。ただし、分けなくてよいからといって、最後まで揉めないとは限りません。
受取人に指定された保険金は誰のものか
被相続人が自分を契約者と被保険者にし、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人に指定したとします。この場合の保険金請求権について最高裁は、保険金受取人が自らの固有の権利として取得するものであり、保険契約者や被保険者から承継するものではなく、これらの人の相続財産に属さないと述べています(平成16年10月29日決定)。
遺産分割は、被相続人の財産に属した権利義務を共同相続人で分ける手続きです(民法896条・907条)。保険金がそこに入らない以上、分割協議で分ける対象ではありません。協議がまとまる前でも、受取人は自分の権利として保険会社に請求できます。
遺留分については、最高裁が平成14年11月5日判決で、死亡保険金の受取人を変更する行為は遺贈や贈与に当たらず、これに準ずるものともいえないと判断しています。ただし、この判決は当時の民法1031条を前提にしたものです。現在の遺留分制度は遺留分侵害額請求(民法1046条)に改められているため、現行制度の説明ではこの点を区別しておく必要があります。
分けないのに相続税の対象になることがあるという二重構造
ややこしいのは、税金の側では扱いが逆になる点です。相続税法3条1項1号は、被相続人の死亡で生命保険金を取得した場合、そのうち被相続人が負担した保険料に対応する部分を、受取人が相続または遺贈により取得したものとみなすと定めます。同項2号は、死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金なども同じ扱いにします。
これが「みなし相続財産」の正体です。国税庁も、死亡退職金と、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金を、相続税がかかる財産に挙げています。ただし、相続人が受け取った死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があり、限度額を超える部分が課税対象です。

著しい不公平が生じたときに開く例外
見落としやすいのが、表の3行目です。同じ決定は続けて、保険金を受け取った相続人とほかの共同相続人との間の不公平が、民法903条の趣旨に照らして到底是認できないほど著しいと評価すべき特段の事情があるときは、903条の類推適用により、その死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象になる、と述べています。
特段の事情があるかどうかは、保険金の額と、その額が遺産の総額に占める比率のほか、同居の有無、被相続人の介護などへの貢献の度合い、各相続人の生活実態といった事情を総合して判断されます。ただし、この決定は当の事案について特段の事情があるとまではいえないとして、持ち戻しを認めませんでした。金額が大きいというだけで開く扉ではありません。
元気なうちに保険証券を家族で見ておく
死亡保険金は、受取人に指定された人のものとして渡ります。ほかの相続人の同意も、分割協議の決着も要りません。それでも、保険金だけが飛び抜けて大きいと、持ち戻しをめぐって争いになることがあります。誰がいくら受け取る契約になっているかを、元気なうちに家族で確かめておきましょう。判断に迷うときは、弁護士や税理士などの専門家に相談してください。


