
遺言を残す人から執行者を頼まれ、その場では軽く引き受けたものの、いざとなると何をすればいいのか見当がつかない、という方は少なくありません。遺言執行者の仕事は就任を承諾したときから始まり、戸籍集めや財産目録づくり、預貯金の払戻しや条件を満たす場合の解約まで中心になって進めます。引き受ける前に、その中身を確かめておきましょう。
引き受けたら、その日から動き出す
親族や知人から遺言執行者になってほしいと頼まれ、深く考えずに引き受けた方は少なくありません。ですが遺言執行者は、就任を承諾したら直ちに任務に取りかかる立場です。まず求められるのが、遺言の内容を相続人へ知らせること。民法では、任務を始めたら遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならないと定められています。
その次に控えるのが、相続人が誰かをはっきりさせる調査です。遺言の中身を実現するには、財産を受け取る人と権利を持つ相続人を確認しなければなりません。ここで集めるのが、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍です。本籍を移していれば前の市区町村までさかのぼるため、そろえるだけで日数がかかります。受遺者は、遺言書の記載や住所・氏名・名称などで確認します。
財産目録を作り、相続人全員に渡す
相続人がそろったら、次は財産を洗い出して一覧にします。遺言執行者には、遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人に交付する義務があります。預貯金や不動産、株式などを漏れなく書き出し、相続人全員へ配ります。これは親切でしておくことではなく、法律上の義務です。
目録づくりと並行して押さえたいのが、遺言執行者がいる間の相続人の立場です。遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産を勝手に処分するなど、遺言の執行を妨げる行為ができません。実際に手を動かして財産を動かすのは、相続人ではなく執行者になります。そして執行者が、遺言執行者であることを示して権限の範囲で行った行為は、そのまま相続人に対して効力を持ちます。
預貯金の払戻しから名義変更まで進める
ここからが手続きの本番です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利と義務を持ちます。特定の財産を特定の相続人に承継させる遺言で、その財産が預貯金債権であれば、執行者は単独で払戻しを請求できます。口座の解約を申し入れられるのは、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の対象になっている場合です。不動産や株式についても、名義を移すために必要な手続きを執行者が進められます。
就任後にやることを、一人で動けるかどうかとあわせて並べると次のようになります。

一連の手続きが済んだら、経過を相続人に報告して任務は終わります。
一人で背負うか、専門家に託すか
遺言執行者の仕事は、書類を渡して終わりではありません。戸籍集めから目録の作成、預貯金の払戻しや条件を満たす場合の解約、名義変更まで、期限に追われながら中心になって進めます。手に負えないと感じたら、自己の責任で弁護士や司法書士などの専門家に任務を行わせる、あるいは初めから執行者に専門家を指定する道もあります。報酬は、遺言に定めがなければ家庭裁判所が定めることができます。引き受ける前に、遺言に何が託されているかを確かめておきましょう。


