
お盆に親族が顔をそろえ、実家の名義の話が出た方もいるでしょう。共有名義は、持っているあいだは波風が立ちません。ところが売りたい、貸したいとなった途端、自分1人では何も決められないと気づきます。しかも置くほど当事者は増えます。動かせるうちに、共有をほどく道筋を家族で確かめておきましょう。
1人で決められること、全員でないと決められないこと
共有名義は、1つの不動産を複数の人が持分で持ち合う状態です。各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用ができます(民法249条1項)。持分が3分の1なら建物の3分の1しか使えない、という意味ではありません。
つまずくのは動かそうとしたときです。何をするかで、必要な同意の重さが変わります。

基準が頭数ではなく持分の価格である点が独特です。賃貸も、過半数で決められるのは一定の期間までです(民法252条4項)。そして建物ごと売るとなれば、持分の小さい人が1人反対するだけで話は止まります。
置いたままにするほど、相手が増える
見落としやすいのが時間の効き方です。相続人が数人いるとき、相続財産はその共有に属します(民法898条1項)。共有名義のまま置くと、共有者の1人が亡くなるたびに、その持分が次の世代へ分かれます。会ったことのない親族が共有者に加わり、連絡先の分からない人も出てきます。
こうした行き詰まりに備え、令和5年4月1日に施行された民法改正で、裁判所が関わる仕組みが整いました。他の共有者が誰か分からない、または所在が分からないときは、その人を除いた共有者で変更や管理を決められる旨の裁判を求められます(民法251条2項、252条2項)。不動産であれば、所在等不明共有者の持分そのものを取得する裁判もあります(民法262条の2第1項)。さらに、不動産全体を第三者へ売る場合には、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分全部を譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分を第三者へ譲渡する権限付与の裁判を求める方法もあります(民法262条の3第1項)。ただし、対象となる所在等不明共有者の持分が共同相続人間で遺産分割をすべき相続財産に属する場合は、相続開始から10年を経過していないと、持分取得・持分譲渡の裁判はできません。いずれも裁判所への申立てが要ります。
ほどく道筋は、話し合いから裁判所へ
まだ遺産分割が済んでいない持分なら、入口は相続人どうしの協議です。共同相続人は協議で遺産を分けることができ、まとまらないときは家庭裁判所に分割を請求します(民法907条)。分け方は、現物のまま分ける、1人が取得して他へ金銭を渡す、売って代金を分ける、が基本です。
分割を終えて共有になっている不動産は、各共有者がいつでも分割を請求できます(民法256条1項)。5年を超えない不分割の約束があるときは別です。協議が調わない、または協議ができないときは裁判所に請求します。裁判所は現物を分けるか、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法で命じ、それが難しい場合などは競売です(民法258条)。なお遺産分割をすべき持分は原則としてこの手続きの対象外で、相続開始から10年を経過すると扱えるようになります。ただし、当該共有物の持分について遺産分割の請求があり、相続人が共有物分割に異議を申し出た場合は除かれます(民法258条の2)。
動かせるうちに、まず持分を確かめる
共有の重さは、動かす段になって初めて表に出ます。相手が増えるほど合意は遠のきます。まずは登記事項証明書で今の共有者と持分を確かめ、誰か1人が欠けたら持分が誰へ移るのかを見ておくことです。方向が決まったら、弁護士や司法書士に相談しながら進めましょう。


