
離婚をきっかけに実家へ戻り、親と暮らし始める方は少なくありません。住まいの不安が減ってひと息ついたころ、児童扶養手当の手続きで同居する親の所得まで確かめられて戸惑うことがあります。所得の判定は、受け取る本人の分だけで決まる仕組みではないからです。生計を同じくする親の所得が限度額以上であれば、手当は一部が減るのではなく全額が止まります。
所得を見られるのは本人だけではない
児童扶養手当は、父母の離婚や死別などで父または母と生計を同じくしていない児童を育てる家庭に支給されます。受け取るには、受給資格と手当の額について認定を受ける必要があります(児童扶養手当法第6条)。
所得による制限は2つの条文に分かれています。同法第9条が受け取る本人の前年の所得を見るのに対し、第10条は本人の配偶者と、本人と生計を同じくする扶養義務者の前年の所得を見ます。受給者が父または母で、実家に戻って親と暮らす場合に関わるのは、第10条です。
ここでいう扶養義務者は、民法第877条第1項が定める「直系血族及び兄弟姉妹」に限られます。親や祖父母、子や孫、兄弟姉妹は入りますが、おじ・おばやいとこは同項には含まれません。
本人と扶養義務者で異なる支給停止の仕組み
同じ「所得制限」という言葉でも、本人と扶養義務者では中身が違います。

限度額は、本人側では扶養親族等の数と扶養親族等でない生計維持児童の数、扶養義務者側では扶養親族等の数に応じて政令で定められています。令和8年度の限度額表では、同じ扶養親族等の数で比べると、扶養義務者側の限度額は本人側の一部支給の限度額より高く設定されています。
注意したいのが、この「所得」が年収そのものではないことです。本人側の所得計算では、収入から各種の控除額を差し引き、受給者や児童が父または母から養育費を受け取っている場合はその8割相当額を加えて算出します。扶養義務者側も政令で定める所得の額で判定されるため、年収や手取りの感覚だけで比べると読み違えます。
前年の所得で判定され、止まるのはその年の11月から翌年の10月までです。震災や火災などで住宅や家財などにおおむね半分以上の損害を受けたときは、所得による制限をかけない特例がありますが、後から返還を求められる場合もあります(同法第12条)。
分かれ目は世帯分離ではなく生計同一の認定
条文が使っているのは「同居」ではなく「生計を同じくする」という言葉です。ただし、国の審査要領では、生計同一関係は課税台帳や住民票その他の公簿等の同居関係によって確認するとされています。自治体の案内でも、住民票上の世帯を分けていても家族と同居している場合は、扶養義務者の所得が判定対象になると説明されています。
そのため、住民票の世帯を分けただけで親の所得判定を避けられるものではありません。実際に別生計として扱われるかなどの個別事情は、住んでいる自治体の窓口で確認が必要です。
同居を始める前に窓口で確かめること
実家に戻ること自体が手当を止めるわけではありません。決まるのは、同居する親などの扶養義務者の所得と、生計を同じくしていると認定されるかどうかの2点です。同居を考え始めた段階で、暮らし方と親の扶養親族の状況を整理し、住んでいる自治体の窓口へ相談しておきましょう。


