
籍を入れずに暮らす選択は珍しくなくなりました。ただ、公的な制度が事実婚をどう扱うかは、分野によって答えが違います。年金や健康保険は法律の中で事実婚を配偶者に含めていますが、所得税の配偶者控除は法律上の婚姻だけが対象です。同じ「夫婦」でも、制度ごとに線の引き方が変わります。
籍を入れないまま10年を過ごした40代夫婦の不安
「もしものとき、相手に何も残らないんじゃないかと心配で。」籍を入れずに暮らしている人から、こうした声は少なくありません。年金や保険といった生活を支える仕組みが、自分たちに当てはまるのかどうかが見えにくいためです。
制度の側は、この点について分野ごとにはっきりと書き分けています。
年金と健康保険は、届出をしていない配偶者を含めている
国民年金法は「配偶者」「夫」「妻」について、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と定めています。法律の定義そのものに事実婚が入っているので、遺族基礎年金などの受給資格を判断するときも、この定義が使われます。
厚生年金保険法も「配偶者」「夫」「妻」について同じ定義を置いています。一般に遺族年金と呼ばれるものには遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますが、どちらの法律でも事実婚は配偶者の定義に含まれます。
ただし、遺族基礎年金は子のある配偶者または子、遺族厚生年金は死亡した方に生計を維持されていた遺族など、各制度の受給要件を満たす必要があります。事実婚であるだけで自動的に支給されるわけではありません。
健康保険法も同じつくりです。被扶養者になる配偶者には「届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」が含まれます。ただし、被扶養者は日本国内に住所を有すること(留学など一定の例外を除く)と、主としてその被保険者によって生計を維持していることが要件で、実際に当てはまるかどうかを判断するのは加入している健康保険の保険者です。事実婚の相手の父母や子も、同じ世帯に属して生計を維持されていれば被扶養者になりえます。
税の側は、法律上の婚姻だけを見ている
一方、所得税の配偶者控除について国税庁は、対象となる配偶者の要件を「民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)」と書いています。事実婚は対象になりません。

住民票の続柄が、事実婚であることを示す手がかりになる
事実婚であることを外に示す手立てとして、住民票の続柄があります。総務省の事務処理要領は、内縁の夫婦について「夫(未届)、妻(未届)」と記載すると定めています。準婚として社会保障の面では法律上の夫婦と同じ扱いを受けているから、という理由づけです。年金や健康保険が事実婚を配偶者に含めていることと、考え方がつながっています。
子についても書き方が決まっています。父の認知があれば「子」、認知がなければ「妻(未届)の子」と記載します。世帯主との続柄なので、そもそも同じ世帯になっていることが前提です。
ただし例外もあります。夫婦同様に生活していても、戸籍上の配偶者がいるときには「夫(未届)」「妻(未届)」とは記載できず、「縁故者」と記載すると同じ要領に書かれています。前の婚姻が続いたままなら、この記載は使えません。
使う制度から順に、当てはまるかを確かめる
事実婚をどう扱うかは制度ごとに違います。公的年金と健康保険は法律の定義に含め、所得税の配偶者控除は法律上の婚姻だけを見ます。線の引き方が分野で分かれている以上、まとめて「夫婦として扱われる」と考えないほうが安全です。まずは住民票の続柄がどうなっているかを確かめ、勤め先の健康保険や年金について気になる点があれば、保険者や年金事務所の窓口で聞いてみましょう。


